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長浜ブログ

ドイツの地方都市に学ぶまちづくり

代表あいさつ

2017.6.16

 

 

アドバイザーを務める鳥取県と日本財団の地方創生プロジェクトの一環として、『ドイツの地方都市に学ぶクリエイティブなまちづくり〜地域の社会的組織の役割〜』と題する講演会を開催しました。

 

話し手は、ドイツ在住のジャーナリスト、高松平藏さん。ドイツのエアランゲン市(バイエルン州、人口10万人)を例にしながら、「地域の質」という視点で今後の地方都市の在り方についてお話しいただきました。

 

ドイツのNPO数は約60万。もちろん、法人格の種類もカウント方法も違いますが、日本は約5万なので12倍ということになります。NPOの歴史も古く、18世紀後半から各地で生まれ、19世紀に増加したそうです。興味深いのは、日本では福祉分野の団体が多いですが、ドイツではスポーツの団体が約3分の1を占めているということです。エアランゲン市においても、約740あるNPOのうち、スポーツだけで約100団体あります。

 

スポーツの特徴は、勝ち負けだけではなく、社交機能、インクルージョン、健康、余暇、教育、郷土愛など、さまざまな社会的価値が含まれることがあげられます。スポーツをはじめ、市民がNPOに関わる機会は社交の場でもあり、お互いが肩書きを外して意見を述べ合う草の根型デモクラシーの基礎を作る機会にもなります。そのためにも、「個人の可処分時間を増やすべき」と高松さんは指摘します。

 

高松さんによれば、自治の力は、(1)都市という場の質を高めるという了解、(2)専門家集団(行政マン、NPOなど)、(3)公論化と議論(草の根型デモクラシー)、という3つの要素が組み合わさってできるとのこと。ドイツの地方では、個人の愚痴・意見→公論→社会運動→地方政治という流れで、個人と政治が連続性を持っているという特徴があります。こうした土壌が育まれている背景には、前述のとおり、肩書き抜きの多様な社会がつくる“信頼の網目”が存在していることがあげられます。

 

人の活動領域や関係性についても興味深い知見をいただきました。既存の日本型構造を「昭和タコツボ型」、ヨーロッパ型構造を「市民社会型」と呼びます。前者では学校や会社が、個人が所属する唯一の世界になりやすく、集団の行動決定も同調圧力や鶴の一声で決まりやすい一方、後者では、学校や会社などの私的領域が唯一の世界ではなく、NPOという社会的な領域が加わります。市民社会のキーワードとしては、連帯、自由意志、討論による民主的な自主決定、明文化された概念などがありますが、例えばスポーツNPOの場合、大人も子どもも区別なく“俺とお前”という平等な関係性が育まれやすい特徴があります。

 

また高松さんは、先進国を「分厚い先進国」と「脆弱先進国」の2種類があると分析しています。社会の安定力を構成する要素として、経済力とそれ以外(自治の力、社会関係資本、人間の尊厳、寛容、自由、平等、連帯など)に分け、日本社会ではこれからますます経済力以外の要素を増やしていくことが求められると指摘します。

 

歴史や宗教、文化、風土、政治や行政の役割など、ドイツと日本には多くの違いがありますが、あらためて鳥取県での地方創生プロジェクトのテーマである“自治”について考える新たな視点をいただきました。

 

興味のある方は是非、高松さんの書籍『ドイツの地方都市はなぜクリエイティブなのか:質を高めるメカニズム』をご一読ください。

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