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長浜ブログ

『人を助けるとはどういうことか』〜支援者のバイブル〜

代表あいさつ

2017.4.27

MITの名誉教授であり、組織心理学という分野の創始者でもあるエドガー・H・シャイン教授の『人を助けるとはどういうことか 本当の「協力関係」をつくる7つの原則。コンサルティングに携わっている人のバイブルといってもいいでしょう。支援者とクライアントという関係性だけでなく、ボランティアや寄付をする側とお願いする側の関係性にも当てはまる知見がいっぱいです。

 

国際協力分野における途上国支援で、「魚を与えるのではなく、魚の釣り方を教えよ」と言われます。魚を与えると1日で食べてしまうけれど、釣り方を教えると生涯食べていけるようになるということですが、現地の人たちの自立に向けて、単に結果を与えるのではなく、そのプロセスやノウハウを提供することの大切さを言わんとしたものです。

 

弊社でもクライアントである公益組織の皆様に様々なコンサルティング支援を行っていますが、実は「魚の釣り方」ではなく、「そもそも欲しいものは本当に魚なのか」を一緒に見極めていく必要があることを痛感しています。お話を伺っていると、実は、野菜でも、肉でも良いような。。。。

 

クライアント側でその答えを明確に持てていないことが多々あります。だからこそ、われわれコンサルタントは適切な問いを発し続けて、本当にクライアントが目指しているものは何かということに気づかせてあげ、かつ、それを成し遂げるための選択肢を提示してあげなければなりません。そこから先、選ぶことは、クライアントの行うことです。

 

ともすると、プロセスではなく、直接的な解決策や時によって独りよがりで押し付け的な答え”らしき”ものを提示してしまいがちです。後日、クライアントに実際に実行したかどうかを聞くと「No」というケースがよくあるのです。

 

さて、前置きが長くなりましたが、本書『人を助けるとはどういうことか 本当の「協力関係」をつくる7つの原則』では、「支援者が陥りやすい六つの罠」として、以下を挙げています。

 

(1)時期尚早に知恵を与えること

→本当に求められているものが何かを知らないうちに、いきなり助言を与えてしまう

(2)防衛的な態度にさらに圧力をかけて対応すること

→どんな助言でも提案でも正しいと、クライアントを説得したくてたまらなくなる

(3)問題を受け入れ、(相手が)依存してくることに過剰反応する

→助けが得られるかどうかわからないうちにクライアントが依存してしまう

(4)支援と安心感を与えること

→支援を与えて、クライアントの地位の低さを助長する

(5)支援者の役割を果たしたがらないこと

→客観的であろうとし過ぎて、全く関わりたくないという気持ちを伝えてしまう

(6)ステレオタイプ化、事前の期待、逆転移、投影

→支援者は過去の経験に基づいたすべてのものに左右されやすい

 

これらに留意したうえで、支援の役割(切り口)として3つ紹介されています。1つ目が、情報やサービスを提供する専門家で、2つ目が、診断して処方箋を出す医師の役割です。そして、公平な関係を築き、どんな支援が必要か明らかにするプロセス・コンサルタントが3つ目の役割です。

 

プロセス・コンサルテーションとは、支援者とクライアントとのコミュニケーションのプロセスに焦点を当てるもので、まず何より、互いの立場を対等にし、クライアントも支援者も無知をなくせるような環境を作っていきます。そのために不可欠なのが、”控えめな問いかけ”をするということ。コンサルティングの世界でよく言われる、質問力や問いかけ力のことです。

 

支援をする立場としては、これら3つの役割を適宜使い分けながら、クライアントとの関係性を構築していかなければなりません。中でも、プロセス・コンサルタントの役割から始めれば、クライアントと対等な支援関係を構築することができ、どんな情報が必要とされ、それを与えるにはどういった方法が最善かを決める上で欠かせない情報を明確にしやすくなります。

 

こうしたプロセス・コンサルテーションが必要な背景には、クライアント側で以下のような実態があることが指摘されています。

 

1.クライアントというものは経営者であれ、友人や同僚であれ、あるいは学生や配偶者、子供などであっても、何が本当にうまくいっていないのか、実際の問題が何かを診断する上で、どんな助けが必要かを知らない場合が多い。しかし、問題を抱えて生きていくのはクライアント自身だけなのだ。

 

2.クライアントは、コンサルタントがどんな支援を与えてくれるのかをわかっていない場合が多い。どのような助けを自分が求めているかを知るためのガイダンスが必要だ。

 

3.クライアントの大半は物事を改善しようという意図を持っている。だが、何をどのように改善するかを見極めるには、支援が必要だ。

 

4.自分が置かれた状況で何が最終的に効果をあげるかがわかるのは、クライアントだけだ。

 

5.自分自身で問題を見抜いて対応策を考えないかぎり、クライアントが解決方法を実行に移す可能性は低い。また、そうした問題が再発したときに、修復する方法が身につかなくなる。

 

6.支援の最終的な機能は、診断するためのスキルをクライアントに伝え、建設的な介入を行うことだ。そうすればクライアントは自力でもっと状況を改善していくことができる。

 

最後に、少し長くなりますが、本書『人を助けるとはどういうことか 本当の「協力関係」をつくる7つの原則』のサブタイトルでもあり、まとめでもある「支援関係における7つの原則とコツ」についてご紹介しておきます。心して読みましょう!

 

【原則1】与える側も受け入れる側も用意ができているとき、効果的な支援が生じる。

(コツ1)支援を申し出たり、与えたり、受け入れたりする前に、自分の感情と意図をよく調べること。
(コツ2)支援したいとか、支援されたいとかいう自分の欲求がよくわかるようになること。
(コツ3)支援しようという努力が快く受け入れられなくても、腹を立てないこと。

 

【原則2】支援関係が公平なものだと見なされたとき、効果的な支援が生まれる。

(コツ4)支援を求める人は気まずい思いをしているということを思い出そう。だからクライアントの本当の望みは何か、どうすれば最高の支援ができるかを必ず尋ねること。
(コツ5)あなたがクライアントなら、何が役に立ち、何が役に立たないかというフィードバックを支援者に与える機会を探そう。

 

【原則3】支援者が適切な支援の役割を果たしているとき、支援は効果的に行われる。

(コツ6)まずは調べてから、どんな支援の形が具体的に必要とされているかを推測すること。
(コツ7)支援する状況が続く中で、あなたの演じている役割がまだ役に立つものかどうか、定期的に調べること。
(コツ8)あながたクライアントなら、もはや助けられていないと感じたとき、恐れることなく支援者にフィードバックを与えよう。

 

【原則4】あなたの言動のすべてが、人間関係の将来を決定づける介入である。

(コツ9)支援者としての役割の中では、人間関係に与えそうな衝撃によって、自分の言動をすべて評価すること。
(コツ10)あながたクライアントなら、やはり自分のあらゆる行動がメッセージを伝えていることを自覚するべきだ。
(コツ11)フィードバック与えるときは、現実の姿の記述にとどめるようにし、判断は最小限に抑えること。
(コツ12)不適切な励ましは最小限にすること。
(コツ13)不適切な修正は最小限にすること。

 

【原則5】効果的な支援は純粋な問いかけとともに始まる。

(コツ14)純粋な問いかけからつねに始めるべきである。
(コツ15)求められた支援がどれほどお馴染みのものに聞こえても、これまで一度も聞いたことがない、まったく新しい要求だとして考えよう。

 

【原則6】問題を抱えている当事者はクライアントである。

(コツ16)関係を築くまでは、クライアントの話の内容に関心を示しすぎないように注意すること。
(コツ17)あなたがすべて知っていると思う問題とどれほど似ているようでも、それは他人の問題であって、あなたのものではないことを絶えず思い出そう。

 

【原則7】すべての答えを得ることはできない。

(コツ18)支援の対象となる問題を分かち合うこと。

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