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「無関心の壁」に対してNPOはどのように立ち向かうべきか?

NPOのメディア戦略

2016.9.14

Writer鈴木 洋平

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■永遠の課題とも言える「無関心の壁」

NPO活動などをする人たちにとって、永遠の課題とも言えるのが「無関心の壁」です。社会課題に関心のない人に対して、どうすれば関心を持ってもらえるのか。関心を持つきっかけをどのように与えることができるのか。最近では、どのようにして社会課題について誤解されないかということも重要です。

 

NPOが寄付を財源として成り立っているものである以上、新たな寄付者を増やすためにも、無関心の人を動かすための情報発信は不可欠です。ただ同時に、人の意識を何かしらの働きかけによって意図して変えようとすることは、とても難しいことでもあります。

 

さまざまな社会課題がありますが、その解決のために熱心に取り組んでいる人が多くいる一方で、まったく関心を持たない人も多数います。それは仕方のないことだとしても、問題はそうした層が分断されていることであり、とくに昨今は無関心であるがゆえに生じる誤解や無理解から、分断の溝が広く深くなっていることです。

 

■「無関心→関心」に変わるのはどんなときか

そもそも、人はどのようなときに、無関心だった事柄について関心を持つのでしょうか。私自身メディアに携わる立場としても、長い間考えてきたことでもありますが、社会課題に関していえば、そのきっかけになるものとして、大別すると主に3つあるのではないかと考えています。

 

1つ目は、自身が当事者、あるいはそれに近い状況になったときです。たとえば、それまでまったくといっていいほど介護とは関係のない生活を送ってきたが、急に身内に介護が必要になった。そうなったときにはじめて介護というイシューが「自分ごと化」され、そこにある問題も知るようになる。つまり自分ごと化されることで関心を持ちざるをえない状況になるということです。

 

2つ目は、感情を大きく揺さぶられたときです。およそ1年前に公開され世界に衝撃を与えた海辺に横たわるシリア難民の男児の写真は、それまでシリアの現状を知りながら無関心だった人々の心を動かしました。移民を支援する団体などに対して多くの寄付が集まり、各国の世論の論調を変えて移民政策が方針転換するなど、世界中に大きな影響を及ぼしました。

 

3つ目は、メディアなどを通じて繰り返し情報に触れることで、刷り込みのようにインプットされていく過程で関心を持つようになることです。いまや重大な社会課題の一つとして認知されるようになった日本における貧困問題や子どもの貧困なども、ほんの10年前まではほとんどないものとして扱われていました。さまざまなセクターの働きかけによってメディアが繰り返し報道したことで、世間的にも少しずつ関心が高まっていったのです。

 

とはいえ、ここで挙げたようなパターンを戦略的に駆使して関心を持ってもらうアプローチをとることは難しいでしょう。さらに、関心を持ったところで、寄付などの具体的なアクションをする人は一握りです。それでも、知らなければ考えることもできないという意味では、まず知ること(知らせること)が重要です。最近話題になった「子どもの貧困」をめぐる議論をみても、まずは「無関心の壁」を打破し、正しく知ってもらうことがどれだけ重要かがわかります。

 

■NPOがとるべきアプローチ

では、NPOはどのようにして無関心な人に関心持ってもらうアプローチをとるべきか。陳腐な提案になってしますが、やはり「知る機会をいかに提供できるか」だと思います。社会課題の解決を目指す活動には当事者でない人が関わっていることが多いですが、なぜ非当事者がその社会課題に関わっているのかを問うと、意外にも「たまたま」であることが多いです。

 

本やテレビ、映画、ネット、友人や知人などを通じて、はじめてそうした問題があることを知ったという人たちです。ある社会課題に触れることで、直接関わることになった人もいれば、関わらないまでも課題の実情を知ってさえいれば、少なくとも誤解や偏見は防ぐことができます。そして、ある問題を知るのは偶発的ですが、そこには知る機会が存在していたことがわかります。

 

知る機会の提供の一つとして情報発信があり、本コラムのテーマでもある「メディア戦略」があります。現場における実情について情報発信する直接的な発信もあれば、特定分野に精通しているからこそできる(行政機関などが行っていない)調査を行い、データとして提示することでメディアが報道する契機をつくるといった間接的な発信もありえます。

 

「無関心の壁」は高く険しいものですが、まずはNPOだけでなく、あらゆるセクターによって知る機会を少しでも多くつくることが重要ではないでしょうか。

Profile

鈴木 洋平

Yohei Suzuki

1988年横浜生まれ。神戸大学大学院の国際協力研究科卒。現在は出版社に所属し、雑誌や書籍、Webメディアなどの編集者。メディアの立場から、社会課題の解決を考えています。 ※発信する情報は個人の見解に基づくものです。

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